2005年06月25日

ネクタイ夫婦

そもそもこのネクタイは気に入らなかったんだ。

柄も気に入らなかったし、生地が分厚くてとても結びにくくて(今朝は4回も結び直した)、まあ、僕にしてみたら最低のネクタイだ。

僕だって柄と生地だけで最低って決めつけたわけじゃない。最低ってのはそんなんじゃない。

ある日、決定的なことが起こったんだ。

おしっこをしようとズボンのチャックを下ろすと、チャックからネクタイの先がはみ出してきた。
ネクタイの先をズボンに入れるからこうなるわけだけど、僕はネクタイをズボンの外に出す派だ。おかしいなと思って引っ張りだしたんだけど、またいつの間にかもとに戻ってしまう。何回引っ張りだしてもいつの間にかネクタイはズボンにINだ。
困ったなあと、僕が地味に困ってると、もう一つ困ったことに気がついた。
ネクタイの細い方が裏っ返しになっていたんだ。
太い方と同じく、何度直しても気がつくと細い方はREVERSEだ。

だから気が付くと僕は必ずズボンにINでREVERSEだ。

どうもこの2人(と、言っても1本だけど)は男と女で、夫婦らしかった。

僕の苦労を知ってか知らずか、こいつらときたら朝から晩までいちゃいちゃして暑苦しいったらない。

中でも最低なのはネクタイを解こうとすると、しくしくとすすり泣くんだ。特に太い方。
僕は仕方がないから
「明日になればまた逢えるさ、めそめそすんな。男だろう?」と、なぐさめたんだ。

僕は毎日このネクタイを締めて会社に行った。シャツと合わない時も我慢した(グレーのシャツに青いネクタイなんて!)それは、このネクタイの好きな人の傍にいたいという気持ちが僕にはすごくよく分かったからだ。

だから総務の木田さんとの2回目のデート(2人で夕食はデートだと思う)の今日も、この前彼女からもらった黄色のストライプのネクタイではなく、いつもの青いネクタイを締めて行った。

木田さんはかわいい。こんなにかわいいなら待ち合わせの時間に遅れても全然腹が立たないのに、木田さんは時間ぴったりに来て僕にこう言ったんだ。遅れてごめんね、と。かわいいなあ。最高だ。

でもその後の彼女はあんまり元気がなかった。

デザートが運ばれてきて僕が慌ててワインを飲み干そうとしている時(メインディッシュが来た後におかわりしたのが失敗だった)に、曇った顔で木田さんが言った。

「あのネクタイ、気に入らなかった?」

げほっげほっ

僕はワインにむせたふりをして今更ながらに言い訳を考えた。本当に今更だ。そんなにすぐ思いつくはずないじゃないか。
むせ続けるのも限界が来て僕が口ごもっているとさらに顔を曇らせて木田さんはこう続けた。

「そのネクタイダサいわ」

「うん。そうかも」

「それに、ズボンの中にネクタイ入れるのも変」

「はははやっぱ古いかな」

「そのネクタイぼろぼろじゃない。他のネクタイすれば?」

「仕方ないだろう」

つい言ってしまった。仕方ないだろう。

木田さんは瞬間きょとんとした顔をしたあと、やや震える声で言った。

「なにが?」

そうだよ、そう言うに決まってる。なにが仕方ないんだよ。確かに仕方ないんだけど、なにがなんて言えないし。

「君がくれたネクタイだって辛子蓮根みたいじゃないか」

この台詞で僕の恋はスタッフロールだ。
主演:僕、ネクタイ夫婦。
助演:木田さん。
脚本・監督・演出:神様(多分)

なんで僕の相方が木田さんじゃなくてネクタイ夫婦なんだよ。僕は痛むおでこをさすりながら1人で勘定を済ませて自分の思考にケチをつけた。

家に帰ってから木田さんが僕に投げつけた小箱を開けてみた。綺麗な包装紙に彼女らしいかわいいリボンがついていたけど、角の一つがひしゃげていて(僕のおでこに直撃)少し悲しそうだった。

中にはタイピンが入っていた。小さなターコイズがアクセントになっていた。

甲斐性なしの泣き虫ネクタイ(太い方)のことだ。結婚指輪もまだなんだろ?
僕はネクタイ夫婦に木田さんのタイピンをプレゼントした。

すると、ネクタイはするする持ち上がってきて、ネクタイの先で僕の目のあたりを拭うんだ。
泣いてなんかないってば。
それに、そこって毎日ズボンにINしてるんだけど。

明日、木田さんに謝まって映画に誘おう。

タグ:大人の童話
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2005年06月23日

文字より声を

「おかけになった電話は、現在電話にでることができません」

またか。

僕は嘆息と共に携帯電話を折り畳んだ。

電話に出られないのか、それとも出ないのか。

彼女の声を聴くことができないという点では同じだが、もちろん問題はそこではない。

今日はもう2度かけてしまった。
次の着信で彼女が出れば問題はないだろうが、もしまたあの無表情な不在ガイダンスだったら、彼女の携帯に1日に3件も自分の着信履歴が残ってしまう。
メールもさっき出した。

゛こんにちは。このメールを見たら電話ください゛

この色彩のないメールを書くだけで一体どれほどの葛藤を乗り越えただろう?

簡素過ぎただろうか。いや、伝えたいことだけを簡潔に、堅くなり過ぎずに伝える、厳選され尽くした文章だと思う。本文に満足して題名をつけ忘れたことを除いては完璧だ。

それとも用件を済ませてしまったほうがよかっただろうか。

僕は聴きたいんだ。彼女の声で彼女の息遣いで。

「はい、いいですよ」

って。

元ネタ
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2005年06月16日

あいつがあなたみたいならいいのになんて言われたことも

良妻賢母-「わたし」へのトラックバックです。

「何でも持っていて いいわね」



こんなこと言われるのって確かに抵抗がある。

「能天気にヘラヘラして生きてきたんじゃない!」

って。

でもこうも思う。
「辛いことがあっても、悲しいことがあっても「いいなー」って思われるほど楽そうに見えるなんて格好いいじゃん」

って。

だからね。こんな風に言うの。
「でしょ?悩みがないのが唯一の悩みなの。くひひ」

って。

今の自分の笑顔。今の自分の言葉。

「太陽みたいに映ってるかな?」なんて自意識過剰な妄想。

たまにはいいよね?
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2005年06月09日

見上げる空と叫ぶ海。それと笑い

「あったまってるから、栓飛ぶかもよ」

Aは笑いながら言った。
「F1の表彰台みたいだな」

Uの声も笑ってる。

見渡せば、みんな笑っていた。

バーベキューの肉を頬張っているAも、くわえ煙草で炭の火加減を調節しているUも、「これ、でけえな」と言いながらシャンパンの栓を抜こうとしているHも、そしてその隣に寄り添うように座っているHの妻Rも。
カメラを構えてる僕も気が付けば頬を持ち上げ目を細めていた。

思えば僕らはいつだって顔つき合わして笑っていたような気がする。
そんなときは決まってこんな空だった。

あの卒業旅行だって。

卒業旅行と言えば聞こえはいいけど、僕らははまあ、なんとなく集まって、なんとなく春休みに出かけようってことになって、なんとなくこの面子だった。そんな感じだから、海辺の町に決めたのも、なんとなく誰かが言い出したらそのままなんとなく決まったってだけだった。

鈍行電車に2時間くらい揺られると、辺りはすっかり田舎だった。海の香りがほのかに漂うその駅はやっぱり田舎で、降りた客は僕らだけだったし、改札口にも当たり前のように人はいなかった。僕らは心持ち鼻をひくひくさせて海風を楽しみながら線路を横切り無人の改札口に向かった。

「オレ、カードで乗り越しだ」

いかにも困った顔でAがそう言うと、僕らは一瞬顔を見合わせてから、大きな声で笑った。

Aも役立たずのカードをピラピラさせながら「へへへ」と、ニヤケた。

酒瓶の詰まった手提げ袋をガチャガチャさせながらついたところは、ホテルというかマンションだった。
夏にはサーフィン客が泊まるらしいそのホテルは、僕らの他にはこのホテルのフロントらしいおじいさんしかいなかった。

部屋は薄暗く入ってすぐに「暗えなあ」とUが言ったけど、「まあまあ」と言うHがカーテンを開けると、窓いっぱいに海がきらきらと広がっていた。
「あ!遠くに船が見える。あ、あそこにも」Hがはしゃいだ。
18にもなって海くらいではしゃぐHは少し変だったけど、なぜだかその時はそうは思わなくて、僕も一緒になって船を探した。他の2人もそうみたいだった。
夕飯までには時間があったので、辺りを散歩しようと外に出た。Hの提案で窓から見えた浜に向かった。

浜につくと、Hと僕とAは波打ち際まで全速力で走った。

Uは砂が靴に入るからと、浜には降りてこなかった。

「うーみー!」

「まさか「ばかやろー」とは言えないもんな?」

Hがそんな風にはにかむものだから、僕も叫んだ。

「うみー!」

僕らの叫びは海に何かを吐き捨てるようにも聴こえて、それだったら、水平線まででも届けばいいのになって思って何度も叫んだ。
Aは足元にあったラベルが漢字だらけで読めないペットボトルを投げながら、一度だけ女の子の名前を叫んだようだった。

「なんにもないな」

夕飯にはまだ早い時間だったけど、食事が出来るところを探して町のメインストリートと思われる通りを歩いた。しかし、店らしい店はスーパー、雑貨屋、本屋、クリーニング屋と古びた仕立屋しかなかった。食事ができそうな店はなかったので、本屋を冷やかしたあとに僕らはスーパーでカレーと明日の朝食の材料を買ってホテルに戻った。
道すがらHがUに、なんで砂浜にこなかったのかを訪ねていたのを後ろに聴いた。Uが行けばよかったよ。と言っていたのが僕には意外だったけど、Hはふうん。とだけ言って、納得したみたいだった。

ホテルはもともと自炊できるようになっていて、僕らはご飯を炊いてカレーを作った。
まだ誰も一人暮らしをしていなかった僕らはこの共同生活が新鮮で、カレーは案の定失敗したけど、なんだか皆うれしそうに「まじい」とか「腹壊すよこれ」とか言いながら全部食べた。

食事が終わった僕らはまたあの浜に来ていた。
Hがわざわざ家から持ってきた花火に、Uが覚え立ての煙草で火をつけると、ロケット花火は火花を巻き散らしながら導火線を縮めていき、終いには夜の海に向かって飛び出していった。

僕は最後に残った線香花火に火を灯した。

ぼっぼっぼぼぼほ…

線香花火は癇癪を起こしたように次々と火花を弾けさせ、次第にその間隔を狭めていって、やがて赤い紫陽花のようにまあるく光ると、今度は弱々しい霧雨のような火の粉を降らせた。
霧雨がやんだ後に残った火球は落下もせずに小さくなって、ゆっくりと消えた。

「帰るか」
ジッポライターをカシャカシャさせながらUが言うので、僕らはホテルに戻ろうとしたけど、Hだけはしばらく夜の海を見つめていた。

ホテルに戻った僕らは修学旅行みたいにフトンを並べて敷いて、寝転がりながら酒をしこたま飲んだ。取り留めもない話の合間にUが家の仕事を手伝うために折角受かった大学を辞めなければならなくなると言うこと、Aが近所の花屋の女の子に一目惚れして、それ以来花ばかり買っていること、Hの彼女がイギリスに留学を希望しているけど、親は反対していて、でもHは応援しているということを僕はグラグラした頭で聞いていた。
僕は意地悪く「逢えなくなると、浮気するかもな」と、呂律の回らない口でいうと、Hは「多分、それでもいいんだ。と思う」と、やはり呂律の回らない口で言った。
僕は彼女が浮気するんじゃなくて、Hが浮気するって意味で言ったつもりだったけど、へえとだけ言って湿気った柿の種を口の中に放り込んだ。


「よく分かったね」


「ベランダからちょうど見えたから。よく起きられたね」


「なんか目が醒めちゃってさ」


「オレ、まだ酒残ってるよ」


「オレも」


「昨日テンション低くなかった?」


「うーん。そうかも。わりい。だから行きそびれた海みてんの」


「オレ、海で朝日見るの初めてだ」


「オレも。早起きは三文の得ってことか?」


「さてね。あ」


「昨夜のトンボじゃん」


「暗いから分からなかったんだな」


「ジッポある?」


「ない。忘れたきたから、煙草も吸えないし」


「これでいいか?」


振り向くとUのジッポライターを差し出すAと、頭を押さえながらのHがいた。

一晩海風にさらされた導火線は、なかなか火がつかなかったけど、1度火がついてしまえばみるみる短くなって明け方の空に向かって飛び出した。


シュポンッ!

突然のシャンパンの音に僕らは驚き混じりの歓声をあげて青空に消えていくコルクの栓を見上げる。

あの日の朝見上げた空と、今見上げている空は違うけど、僕らはいつかどこかでまたこんな空を見上げるのだろう。

「そう言えばさ、昔も―」

Hの声がする。

空は今日も水色の絵の具を薄めたみたいに青い。

元ネタ
posted by なりっと at 07:40| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月18日

黒い恩返し

まだ夕日が落ちきらない帰り道、カラスが道で倒れていた。

周りには黒い羽根が散乱していたし、よく見ると血を流していた。血は真っ赤で夕日よりなお赤かった。

それをみて最初に感じたことは、カラスも血は赤いんだ。ってこと。でもよく考えてみると、血が赤いのは当たり前で、いやいや、よく考えてみなくてもやっぱり当たり前のことで、僕はなぜだか急いで別の感想を考えてみたりもした。

カラスは素人目にも重傷に見えた。クチバシの先は欠けていたし、片方の翼は変なほうに向いていた。足も1本足りなかった。でも目だけはギョロギョロとしていて、なんだか人間の目のようだった。

まあ、虫の息ってやつだ。鳥だから鳥の息かな。

僕がそんなくだらないことを考えているうちにもカラスは急速に弱っているようだった。ふと、立ち止まって瀕死のカラスを見つめている自分に気づいた。
僕はどうして立ち止まったんだろう?僕だって今僕とカラスを怪訝そうに見比べながら通り過ぎたサラリーマンのように家路を急いでいたはずだ。

でも僕はそのカラスを抱き上げた。カラスは血でぐっしょりと濡れていたけど、カラスの身体が思ったより軽かったことのほうが気になった。

カラスを抱いて夕方の商店街を歩くのは勇気がいった。でも、恥ずかしがって裏道を行くのはもっと勇気のいることのように思えて、商店街の道の真ん中をなんでもないような顔して歩いた。

動物病院についた時には日もすっかり落ちて、診療時間は過ぎていて、それでちょうど中からおじさんが出てきたところだった。白衣は着てないけど、きっと先生だと思った。
僕があの、道にいて、と、要領悪く話しかけると、おじさんはやっぱり先生で手の中にいるカラスを見てすぐに了解してくれたらしく、鍵を取り出して中に入れてくれた。
病院の玄関でカラスを差し出すと、血でベトベトのカラスをやさしく受け取ってくれた。受け取ってくれたけど、すぐにおじさんは手遅れだったと言うような趣旨のことを、すまなそうに説明しはじめた。僕はその説明を、そんなに申し訳なさそうにするなら、心臓の音を聞くなり脈を取るなりしてくれてもいいのにな。もしかするとあの申し訳なさそうな話しかたは、テクニックなのかも知れないな。いやいや帰り際に何の得にもならなそうなカラスの血でベトベトの僕の相手をしてくれてるんだから、良い先生なんだろうな。なんて思いながら聞いていた。

先生はカラスを引き取ると申し出てくれたけど、僕はとっさに家に埋めるって答えてしまって、帰り道に途方に暮れた。

ワンルームマンションの2階にどうやって埋めればいいのだろう。僕が自分の思いつきよりも、動物を埋めるスペースもない軽薄な家を責めながら商店街を歩いていると、ゴミ捨て場になっている電柱に張り付いている仰々しい明朝体の看板が目に入った。

看板には、
『嵯峨火葬場』
と書いてあった。

横に書いてあるゾンザイな地図を見ると、家のすぐ近くだった。

ウチはゴミ焼却場じゃないんだよ。ペットの火葬は獣医の火葬届けが必要だし、それにしたって毎週水曜日の午前中に出してくれなきゃ受け付けらんないよ。
確か火葬場のおじさんにはこんなような内容のことを言われたと思う。なんだか釈然としなかったけど、僕はそうですか。とだけ言ってその火葬場を後にした。

今カラスは僕の部屋のテーブルにいる。

血はとっくに固まってて、テーブルを汚す心配はなかった。
僕はカラスの血がべっとりとついたシャツを丁寧に洗った。やっぱり血は完全には落ちなかったけど、せっかく洗ったのでハンガーに吊るしてカーテンレールに干した。

テーブルのカラスを見ると、なんだか泣きたくなって、そう思うと更に泣きたくなって、我慢しきれずに少しだけ泣いた。
泣いたら身体の奥のほうが疲れてきて重くなった。お腹は空いていたし、カラスの目は相変わらずギョロギョロしてたけど、そのまま眠った。

夢は見なかったと思う。

明け方目が覚めてみると、玄関の鍵を掛け忘れていることに気づいた。開けた覚えはないけど、窓も開けたままだった。

夕べ洗ったシャツはそのまま吊るしてあったけど、染みはどこにもなかった。

それでテーブルの上にはなにもなかった。

僕はとりあえず爪の間に血がついた手で、コーヒーを丁寧に淹れて、今日は会社を休もうと思った。

タグ:大人の童話
posted by なりっと at 21:53| 東京 ☁| Comment(10) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月03日

無駄にサービス

「いらっしゃいませぇ」

「予約してないんですけど」

「一見さんでも見捨てなぁいがモットーです」

「なぜかカチンときました。カットできます?」

「でぇきまぁす。クサイ球はとことん喰らい付いて、ストライクしか振りません」

「あ、いや散髪して欲しいのですが、美容院ですよね?ここ」

「コースが3種類からお選びいただけまぁしてぇ」

「ああ、人気のある美容師さん順にランクづけがされてるんですね」

「ドッペルゲンガー、プロポリス、桜田門外の変となっておりまぁす」

「なに順ですか」

「さあ?」

「またカチンときました」

「一番安いコースにして下さい」

「かしこぉまりました。では、ゴールドラッシュコースで」

「凄そうですから。カットだけですよ?」

「追い込まれているのに、ウェイティングのサインでぇすか」

「野球ネタはもういいですって。わかりにくいし」


「今日はどのようになさいましょう?」

「うわ、さっきの人じゃないですか。喋り方変えても分かりますよ」

「今日はどのようになさいましょう??」

「あ、ちょっと怒ってるんですか」

「今日はどのようになさいましょう???」

「わかりましたよ、無表情で同じ台詞連呼しないでくださいよ。全体的に軽めにして下さい。毛が多くて困ってるんです」

「スカスカのかるーい頭にしろと?」

「またカチンときました。でもまあ、そうです。お願いします」

「それはカット担当の者にお申し付け下さい」

「あなたはなんなのですか」

「シャンプー担当兼代表取締役です」

「偉いんですか」

「さあ?」


「お疲れ様でした、カット担当の者と交代いたします」

「あ、はい。有難うございました」

「うわ、なんか向こうからリリーフカーがやってきた」

「おまたせっ!カット担当兼専務ですっ!」

「って、リリーフカー運転している人が出てくるんだ。てか、さっきの人じゃないですか」

「今日はどんな風にっ?」

「さっき言ったじゃないですか」

「今日はどんな風にっ??」

「繰り返し系ですね。分かりましたよ。全体的に短くしてください」

「本日は市場が休みなので、臥薪嘗胆コースは品切れですっ!」

「そんなの頼んでないですよ。普通に短めにしてくれるだけでいいですからね」


「お客様、お顔は剃り落としますかっ!」

「落とされてたまりますか。剃るだけにしてください」

「お髭は剃られますかっ」

「伸ばしてないですから。女ですから」

「お耳は反りますかっ」

「反ってどうするのですか。耳たぶも剃ってください」

「耳ごとっ?」

「毛ですよ、毛」

「お客様、眉毛の間はお剃り致しますかっ?」

「断る人いるのですか?勿論お願いします」

「眉間に風穴はお開けしますかっ」

「殺す気ですか。やめてくださいよ」

「1個もっ?」

「1個でも十分死にますから」

「雑誌はお読みになりますかっ」

「仰向けですよ、タイミング最悪なんですけど。ってか遅いですよ」

「私は週間ベースボールとNumberが好きですっ」

「聞いてません」




親友TOに毎回「眉毛の間お剃りしますか?」って聞かれる美容院がある。って話を聞いて、考えてみました。
でも、対話形式のネタをやってみたかったのと、文章力のなさから以前に読んだiceさんの記事の影響から脱却できませんでした。
結果、出来の悪い模倣品ができ上がってしまいました。

icedayさん。本当にごめんなさい。

posted by なりっと at 00:34| 東京 ☁| Comment(7) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月22日

これこそまさに

ある夫婦の会話。

「ケルナグール」
じゃなくてえーとなんだっけ?あのローマ法王を決めるやつ。















「ヤンバルクイナ」
ちがうちがうなんか日本語みたいなやつでさーあったじゃん。
















「ガンバローネ」
あーそうじゃなくてもっとこうなかなか決まらないって感じの。















「キマーラナイ」
ってそのまんまじゃんちょっとは捻れよあ確か最初がコで最後がべだったような気がする。















「コベ」
くっつけただけじゃんもっと長いんだよ伸ばしてたりもしたような。















「コベローベ」
あなんか惜しいわかんないけど惜しい頑張って。















「コベべーベ」
うわ遠くなったよわかんないけど。















「コンベローベ」
あちかいちかい惜しいなああとちょっとなんだけどなーわかんないけど。















「コーンスターチ」
そうそうそれ正解あーすっきりしたーってちがうからそれは確かビールに入ってるやつでしょ。















「カルダモン」
食材系行っちゃった?なんだよーノリツッコミがそんなに聞きたいのかよーでもだめだめさ考えてよあとちょっとなんだから。
















「コンドルミニマム」
それを言うならコンドミニアムでしょ。なんで小さいんだよしかもコンドルが意味わかんないよー。















「コンドーム」
あーついに下ネタかよ「なかなか決まらない」でその答えって意味深すぎるよ。















「コンクリート」
ああもう惜しすぎってゆーか早く当ててよもう疲れてきたよ頼むよまじで。















「コンゴーリキシ」
サイアクだよ離れ技過ぎるよしかも金剛力士ってどっちのだよ向かってみぎなのかひだりなのかはっきりしてよ。















「セイクラーベ」
してどうすんのよノッポさんが法王なんてやだよ最後の晩餐とかおりがみで作りそうだよゴン太くんの持ってる100円玉でかすぎるし。















「ミズクラーゲ」
あーあれね酢の物おいしいよねってまたノリツッコミしちゃったじゃんもう誰も読んでないよだって長すぎるもんだりーよ。















「コンクラー…」
そうだよそれだよ絶対正解だよ早く続き言っちゃってよ。















「…メン」
ラーメンかよどこのラーメンだよコンクってどこよ?いいかげんにしてよってゆうか・・・以下略

posted by なりっと at 21:33| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月06日

ゲッコウ

ある、空の広い国にとても月の好きな男がいました。
男は毎晩毎晩、月を眺めてはその美しさの虜になっていきました。
やがて、男は国で一番月に詳しくなりました。男は思います。

「私ほど月を好きな者はいない」

でもある日男はこんな疑問を持ちました。

新月、三日月、半月、満月。
青、黄、赤。

「色も形も定まらない'月'の正体は一体なんなんだ?」

一人で考えてもいっこうに解らないので、男はこの問いを国中の者に聞いて回ることにしました。

ある公園で詩人が言いました。
「月にはウサギが見える。だから月はウサギだ」
「ほう、確かに黄色く光るあの月は、大きなウサギが餅を搗いているように見えるが、あの月が赤く光る時ウサギは血だらけにでもなるのかい?青白く光った時には寒さで震えでもするのかい?」

ある飲み屋で小説家が言いました。
「月には宇宙人が潜んでいる。だから月は宇宙人の前線基地だ」
「ほう、ならいつになったら宇宙人は月から攻めてくるんだい?月は今日だってグルグル回っているばかりじゃないか。今頃太陽を拝んでる連中は月の存在なんて忘れて背中を向けているっていうのに」

ある図書館で学者が言いました。
「月には莫大な鉱物資源が眠っている。だから月は我々の物だ」
「ほう、じゃああの三日月は、誰かがあらかた鉱物資源を持って行っちまったあとなのかい?また暫らくすれば満月になるよ。その時はあんたが採りにいきな」

「奴らは何もわかってない」

男は国中の者達に憤慨し、苦悩し、月を見上げることすら忘れて、独り暗い部屋の中で幾度も考えました。

「正しい答えはなんなんだ。正解は一つだけのはずだ。問いと答えはいつだって一対であるべきだ。」

男は暗い部屋で毎晩毎晩、考え続けましたが解りません。
ある夜、月明かりが窓から射しこんで、部屋をそっと照らしました。
月の光の美しさを久しぶりに感じた男はあることに気が付きます。

皆の答えの共通点は月を見上げ、月に想いを馳せる心。
その美しい姿に見惚れ、愛しむ気持ちだということを。

国中の者たちが月を好きなことを知った男は、もう月の正体など考えなくなりました。

その代わりに月を眺め、ただただ愛する男に戻りました。

posted by なりっと at 00:01| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月15日

袴とブーツと紅

約3ヶ月ぶりに会った彼女は、何というか、麗わしかった。

憶えてたんだ

何故かね

で、迎えに来てくれたの?

うん、一応

一応、か

あのさ、


決めていた言葉が出かかった時、軽薄な和音でカノンが響いてきた。

もしもし、うん、わかる、で、今向かってるとこ

これからどこかに行くのだろうか。当たり前だ。卒業式の日に真っ直ぐ家に帰るわけはない。

ねえ、空が青いのはなんでだか知ってる?

知ってるよ。可視光線の中で一番波長が長いのが青で―

彼女は巾着から取り出したコンパクトを覗き込みながら、口紅をつけた小指を唇に押しあてている。

―であるから、って、聞いてる?

うん、聴いてるよ。あなたにとってはそうなんでしょうね。ずっと。でも私の空はもっと綺麗

彼女はそう言って微笑んだ。

じゃあ、行くね

うん、じゃあ・・・


その先に続ける言葉を探したけど、彼女の後ろ姿が見えたから諦めた。






彼女の姿が完全に見えなくなってから反芻した彼女の微笑みは、泣き顔に換わってて上手く思い出せなかったけど、

空はいつもより少しだけ綺麗だった。
posted by なりっと at 22:47| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月05日

月夜に踊る雪だるま

あ、どうも。雪だるまです。

先程、前の家に住んでいる母子に造ってもらいました。
始めは子どものほうがハイテンションだったのですが、いつしか母親のほうのスイッチが入ったらしく、予想以上にゴロゴロゴロゴロコロがされました。お陰で大きくなれてとてもうれしいです。

だから、ちょっとゾンザイだなって思える、葉っぱの目や小枝の腕もあまり気になりません。

まだまだ雪が降ってます。
雪だるまに雪が積もると、どこまでが積もった雪で、どこからが身体なのか分からなくなってしまいそうで、少しだけ心配です。

明日もあの母子は遊んでくれるそうです。
友達を造って欲しいな。

暖かくなったら、帽子を買ってくれるって、子どもが言ってました。
posted by なりっと at 00:11| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | たまには昔の話を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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